「耐震・免震・制震のどれを選べばいいのかわからない」
「それぞれの違いはなに?」
「地震対策に力を入れたいと思っている」
マイホームの地震対策には、耐震・免震・制震の3つがあると聞いたものの、自身にはどれがあっているのかわからず悩む人は多いでしょう。
違いがわからないと、判断のしようがないですよね…。
この記事では、大手ハウスメーカーで15年間勤務し、現在は家づくりをサポートしている筆者が、以下の内容を解説します。
- 耐震・免震・制震の違い
- どれがいいかを見極める方法
- それぞれに向いている人
- ハウスメーカー別の技術
耐震・免震・制震のどれがいいかを、自身の状況にあわせて見極められるようになります。ぜひ最後までお読みください!
耐震・免震・制震のどれがいいかはマイホームの希望により人それぞれ
マイホームは、人により理想としている家の形が異なります。
たとえば、低コストを重視する人や高価な設備を整えたい人とでは、求めるものが変わってくるでしょう。
耐震・免震・制震のどれがいいかについても、マイホームの希望により人それぞれ変わります。違いを理解したうえで、取り入れる構造をハウスメーカーと相談することが大切です。
これから解説する見極め方やそれぞれに向いている人の特徴をチェックして、自身にあった地震対策の方法を発見しましょう!
耐震・免震・制震はどれがいい?3つの違いを紹介
耐震・免震・制震には、以下のような違いがあります。
- 耐震|地震の揺れに耐える
- 免震|地震の揺れを逃がす
- 制震|地震の揺れを吸収する
順番に見ていきましょう。
1. 耐震|地震の揺れに耐える
耐震は、建物自体を強くして、地震による住宅の崩壊を防ぐためつくられる構造です。
具体的には、壁や柱などの建物の組み立てに関わる部分を強化し、振動に耐えられる住宅を建設します。
免震・制震と比べると、揺れを軽減する効果がほとんどありません。家が揺れやすいと、家具が倒れてくる可能性が出てきます。
耐震は住宅の基礎となるので、新築にはすべて導入されていることを覚えておきましょう!
2. 免震|地震の揺れを逃がす
免震とは建物と基礎を切り離して、地震のエネルギーが家に伝わらないようにする装置です。ダンパーと言われる装置を建物と基礎の間に取り付けることで、地震の揺れを逃がしています。
建物の倒壊を防ぐだけでなく、住宅が揺れにくくなるため、家具の倒壊を防ぎやすくなるでしょう!
また、住宅が揺れにくいと建物へのダメージの蓄積も減り、家が長持ちしやすくなります。耐震・制震と比べてコストが高い傾向があるため、予算に余裕がある場合の検討をおすすめします。
3. 制震|地震の揺れを吸収する
制震とは、地震の揺れによって建物が振れてしまうことを抑える技術です。「ダンパー」と言われる装置を筋交いのように柱の間に設置する方法が一般的です。
「ダンパー」は、地震の揺れに合わせて変形することでエネルギーを吸収し、建物の揺れを抑えます!
「ダンパー」は各ハウスメーカーで様々な仕組みの装置が開発されています。例えば、トヨタホームの「T4システム」はダンパーの中のオイルで、住友不動産では特殊粘弾性ゴムで揺れを吸収する仕組みです。
戸建て住宅は、耐震と制震を組み合わせた家がつくられるケースがあります。耐震により建物自体を強くし、制震による揺れを抑えられるため、地震対策を手軽に強化したい場合に効果的です。
耐震と制震を組み合わせるとコストが上がるので、どの程度地震対策を重視するかで考えることも大切です!
耐震・免震・制震のどれがいいかを見極める3つの方法
耐震・免震・制震のどれがいいかを見極めるには、以下のような方法があります。
- 耐震を基本に考える
- 技術を組み合わせて考える
- コストの違いを理解する
ひとつずつ確認していきましょう。
1. 耐震を基本に考える
マイホームでもっとも建設されているのは、建物が倒壊しない構造である「耐震のみ」を採用した家です。地震対策の基本となるだけでなく、コストが安いため導入しやすいのが特徴です。
地震に耐える住宅の強さをあらわしたものを「耐震等級」と呼び、以下のように等級ごとの違いがあります。
- 耐震等級1:すべての建物に求められる最低基準
- 耐震等級2:耐震等級1の1.25倍の耐震性
- 耐震等級3:耐震等級1の1.5倍の耐震性
耐震等級1でも、2000年に改定された建築基準法をもとにしており、一般的な大地震では倒壊しないとされています。
これからつくる住宅は地震に強い家が基本になるので、まずは耐震を基準に考えて家づくりをスタートするといいでしょう!
耐震等級3にして後悔する理由については、関連記事「【いらない?】耐震等級3にして後悔する4つの理由!メリットや取得時のポイントも解説」で解説しています。ぜひ参考にしてみてください!
2. 技術を組み合わせて考える
耐震・免震・制震は、それぞれ独立した地震対策の構造です。しかし一般的には制震・免振装置は、耐震構造と組み合わせて設置されます。それぞれの組み合わせの特徴は、以下の表を確認してみてください。
組み合わせ | 特徴 |
---|---|
耐震+制震 | ・倒壊しにくく揺れも軽減できる ・他に比べてコストを安く抑えられる |
耐震+免振 | ・免振によって揺れのダメージを防げる ・マンション、ビルなどの大型の建物で採用されるケースが多い ・一般住宅では鉄骨造の家で採用されている |
耐震+制震+免振 | ・横揺れは免振、縦揺れは制震で対応できる ・タワーマンションなど大型施設で採用されている |
耐震と制震の技術を組み合わせると、住宅自体が地震で倒壊しない構造になるだけでなく、揺れの軽減も同時に実現できます。免振との組み合わせは、横揺れを防ぎやすくなります。
耐震+制震は、マイホームにも実際に使われている技術ですね!
また、耐震・免震・制震の技術をすべて組み合わせた建物もつくられています。ただし、タワーマンションのような大型施設で導入されている仕組みであり、一般的な戸建て住宅での採用は少ない傾向です。
3. コストの違いを理解する
耐震・免震・制震では、それぞれ導入コストが異なります。
構造 | 導入コスト |
---|---|
耐震 | 建築費用にふくまれる |
免震 | 200~500万程度 |
制震 | 50~100万円程度 |
住宅をつくるときに必須となる耐震は、あらかじめ建築費用にふくめられているケースがほとんどです。そのため、免震や制震を導入する際には追加費用として計算されます。
免震はもっとも高コストである一方で、地震に対する強さと揺れの少なさに優れています!
地震対策をどこまでするか迷っているけれど、なかなか答えが出せない場合は、プロに相談をしてアドバイスをもらう手が有効です。
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耐震・免震・制震はどれがいい?メリット・デメリットを比較
ここからは、耐震・免震・制震のそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。
どれを選択するかのヒントになるため、ぜひチェックしてみてください。
1. 耐震のメリット・デメリット
耐震のメリット・デメリット | 内容 |
---|---|
メリット | ・コストが安価 ・すべてのハウスメーカーで対応できる |
デメリット | ・揺れの軽減ができない ・免震と比べると効果が低い |
耐震は、すべての住宅に対して導入される構造です。そのため、設計が比較的自由であり、免震や制震と比べ工期も短いのが特徴です。
揺れの軽減ができないため、家具が倒れてくる可能性があるところは注意しなければなりません!
2. 免震のメリット・デメリット
免震のメリット・デメリット | 内容 |
---|---|
メリット | ・地震の揺れを軽減できる ・住宅を長く保てる |
デメリット | ・コストが高額 ・メンテナンスが必要 ・対応できるハウスメーカーが限られる |
免震は、耐震・制震と比べて、より地震に強い住宅にできるのが特徴です!
住宅は、地震を受けるたびにダメージが蓄積されていきます。しかし、免震は揺れが家に伝わるのを抑える効果があり、住宅を長く保つことにつながります。
ただし、コストが比較的高くなる点には注意しなければなりません。地震対策をどこまで優先するのか、見積もり時点での検討が必要です。
3. 制震のメリット・デメリット
制震のメリット・デメリット | 内容 |
---|---|
メリット | ・地震の揺れを軽減できる ・メンテナンスが容易 |
デメリット | ・耐震に追加費用が発生する ・対応できるハウスメーカーが限られる |
制震は、耐震に追加する形で設置する地震対策の仕組みです。
マイホームに揺れを吸収できる部品をどの程度導入するかで予算が変わります!
免震に比べて低コストで地震による揺れを軽減できるため、予算に組み込みやすいところもメリットといえるでしょう。
耐震・免震・制震はどれがいい?それぞれに向いている人
耐震・免震・制震には、それぞれ以下のような人が向いています。
- 耐震|低コストで地震対策をしたい
- 免震|住宅を長く保ちたい
- 耐震+制震|地震に強い家をつくりたい
チェックすれば、自身がどのような住宅にしたいかの判断が可能です。
1. 耐震|低コストで地震対策をしたい
コストをかけずに日常生活をするには問題のない地震対策をしたいのであれば「耐震」がおすすめです。
現在の住宅は、すべて一般的な大地震に耐えられる構造でつくられています。
耐震のみであっても、地震対策が不十分なわけではありません。
耐震は、すべてのハウスメーカーが標準で住宅に盛り込んでいる構造のため、追加費用として計算されない場合がほとんどです。
まずは耐震を基本としたうえで、制震や免震と比べてみるとコストの差がわかりやすいでしょう!
2. 免震|住宅を長く保ちたい
住宅は、一般的に50年以上は住み続けられる想定で建設されます。しかし、繰り返される地震のなかで家自体にダメージが蓄積すると、長く住めなくなる可能性も考えられるでしょう。
「免震」であれば、住宅に地震の揺れが伝わりにくい構造をつくれます。地震の被害が少ないぶん、住宅を長持ちさせることが可能です。
ただし、耐震や制震と比べて、免震はコストがかかるところに注意しなければなりません!
耐震や制震でも、一般的な大地震で建物が倒壊しないとされる家は建てられます。住宅に関する予算が余っているときに、初めて免震の導入を検討するといいでしょう。
「南海トラフ地震」や「首都直下地震」など、大きな被害が予測されている地域であれば、免震の導入により不安を減らせるかもしれません!
3. 耐震+制震|手軽に地震と揺れに強い家をつくりたい
建物内に揺れを吸収する部品を設置する制震は、耐震と組み合わせて効果を発揮します。
耐震で倒壊しない家づくりをし、制震で住宅への揺れを軽減できるのが「耐震+制震」です!
耐震+制震は、導入コストが高い免震に比べ、比較的安価に住宅へ組み込めるところが魅力です。住宅への揺れが少ないと、家具が倒壊する危険性を減らせるため、マイホームの安全性がアップします。
長く住み続ける新築で、耐震のみだと不安が残るのであれば、制震の追加を検討してみてください!
地震に強いハウスメーカーについては、関連記事「【暮らしを守る】地震に強いハウスメーカー10選!選び方や耐震性の高い家の特徴を紹介」で解説しています。ぜひ参考にしてみてください!
【ハウスメーカー別】耐震・免震・制震技術5選
耐震・免震・制震は、各ハウスメーカーで次々と新たな技術が開発されています。こちらでは、主な5つのハウスメーカーの技術を紹介します。
- トヨタホーム
- 住友不動産
- ヘーベルハウス
- ミサワホーム
- 三井ホーム
ハウスメーカー選びの際に参考にしてみてください。
1. トヨタホーム
項目 | 技術・構造 |
---|---|
耐震 | パワースケルトン(鉄骨ラーメンユニット) |
制震 | T4システム |
トヨタホームは独自の構造体「パワースケルトン」、制震装置としては「T4システム」を採用しています。
「パワースケルトン」とは、業界トップクラスの125ミリ角鉄骨を使ったラーメンユニットです。国が定めた住宅性能表示制度の耐震等級3を超える強度を実現しています。
「T4システム」は、地震エネルギーをオイルが吸収する仕組みです。建物の変形量を約20%~70%軽減できるとされています。
トヨタホームの実験では、震度6以上の揺れでも構造体に損傷がないことを証明しています!
2. 住友不動産
項目 | 技術・構造 |
---|---|
耐震 | ウッドパネル工法 |
制震 | 特殊粘弾性ゴムを組み込んだダンパー |
住友不動産は「ウッドパネル工法」と「特殊粘弾性ゴムを組み込んだダンパー」で高い耐震性を実現しています。
「ウッドパネル工法」は、構造用接合金物を使って強化された軸組工法をベースに、壁には厚いパーティクルボードという耐力面材を使っています。
また特殊粘弾性ゴムが地震の揺れを吸収するダンパーを用いて、制振装置がない場合に比べて揺れを50%低減させることに成功しました。
強固な構造であるため、柱の少ない広い間取りを作ることも可能です!
3. ヘーベルハウス
項目 | 技術・構造 |
---|---|
耐震 | 重鉄・システムラーメン構造 |
制震 | オイルダンパー制震装置「サイレス」 |
「ヘーベルハウス」とは、旭化成ホームズの戸建て注文住宅です。
「重鉄・システムラーメン構造」とオイルダンパー制震装置「サイレス」によって災害に強い、高耐久の住宅を実現しています!
「重鉄・システムラーメン構造」は骨太・肉厚な重鉄骨を、特殊なボルトで結合した独自の工法です。柱や壁による仕切りのないワンフロアでも、巨大地震に耐えられる強度を実現しています。
またオイルダンパー制震装置「サイレス」は、地震の揺れによる鉄骨梁の動きに合わせて、オイルダンパーのピストンが地震エネルギーを吸収する仕組みです。
ヘーベルハウスの実験では、オイルダンパーが23回もの震度7相当の建物の揺れを吸収することを確認しています。
4. ミサワホーム
項目 | 技術・構造 |
---|---|
耐震 | センチュリーモノコック構法 |
制震 | MGEO(エムジオ) |
ミサワホームは、強固な構造体を作る「センチュリーモノコック構法」と独自の制振装置「MGEO(エムジオ)」を採用した家づくりをしています。
2つの技術を組み合わせることで「倒壊ゼロ」に加えて「損傷ゼロ」の家を目指しています!
モノコック構法とは骨組みを使わずに床・壁・屋根の面で家を支える構造です。ミサワホームのでは、120mmの厚い木質パネルを採用して強固な構造を作り上げています。
制震装置「MGEO(エムジオ)」とは、テコの原理を使ってダンパーに揺れを伝え、建物の変形を抑える装置です。ミサワホームの実験では、阪神淡路大震災の2倍のレベルの揺れでも損傷ゼロを確認しています。
5. 三井ホーム
項目 | 技術・構造 |
---|---|
耐震 | プレミアム・モノコック構法 |
制震 | オリジナル制震付与耐震壁「VAX(バックス)」 |
三井ホームは「プレミアム・モノコック構法」とオリジナル制震付与耐震壁「VAX(バックス)」によって、震度7に60回耐えられる家を実現しています。
「プレミアム・モノコック構法」は、2×6(ツーバイシックス)ウォールを基本構造とし、強度の高い基礎や接合プレートなど独自技術が使われています。オリジナル制震付与耐震壁「VAX(バックス)」は、内壁枠組みに制振ダンパーと制振フレームを組み込んだ装置です。
業界で初めて耐力壁と制震壁の両立に成功したことでグッドデザイン賞を受賞した技術です!
耐震・免震・制震のどれがいいかは家づくりの希望を整理してから考えよう
耐震・免震・制震のどれがいいかは、マイホームの希望により人それぞれです。
現在は、すべてのハウスメーカーが、一般的な大地震でも倒壊しない家をつくる義務があります。それを踏まえたうえで、どのような家づくりをしたいかを考えることをおすすめします。
限られた住宅予算のなかで、どこまで地震対策にお金をかけるのかを検討する必要がありますね!
せっかくの新築なので、後悔しない地震対策を検討したいのであれば、プロに相談してアドバイスをもらってみてはいかがでしょうか。
私は、大手ハウスメーカーで15年の勤務経験がある家づくりのプロです!家の構造だけでなくお金やスケジュールに関する相談も可能です。
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